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青森駅前市場団地で売られている初物の鱈。これはメスで白子のあるオスは約4000円と高い。 |
◆津軽(青森県)◆
津軽の郷土料理「じゃっぱ汁」をタラ腹食べる
北国から初雪の便りが聞こえてきました。この季節になると、サカナ偏に雪と書く「鱈(タラ)」がそろそろ出回り始めます。旬にはまだ早いのですが、江戸っ子が新緑の季節に競って初鰹を求めたように、初物の鱈を求めて、秋たけなわの青森市にやって来ました。目指すは、JR青森駅前の真ん前にある駅前市場団地。ここは北国の海や大地でとれた新鮮な魚やりんごなどがすべて揃う「青森市民の台所」です。昔は、上野発の夜行特急「はくつる」が青森駅に早朝着くたびに、時間潰しによく訪れたものでした。
今は大きなビルの中に入った魚売り場で、ベテランのかあさんが言います。「鱈は何でも食べる貪欲な魚。悪食だがら、腹が大きいべ。だから『タラ腹食べる』という言葉が生まれたんだ。捨てるとごろがねえ。

青森の郷土料理、じゃっぱ汁。新鮮な鱈のアラが余すところなく使われる。 |
これを丸ごと食べるには“じゃっぱ汁”がいちばん。津軽の冬は、まずじゃっぱ汁から始まる」。じゃっぱとは、津軽弁でサカナのアラのこと。「だども津軽で、じゃっぱ汁といえば鱈しかねえ」そうです(注:山形庄内地方にも同じ鱈のアラと白子を使ったドンガラ汁という郷土料理があります)。
駅前市場団地のベテランかあさんの店で朝とれたばかりの新鮮な鱈を買い求めた私は、すぐ隣にある行きつけの市場前食堂「埼玉屋食堂」で、一足早いじゃっぱ汁を作ってもらうことにしました。埼玉屋食堂はわが行きつけの安くてうまい大衆駅前食堂です。親が埼玉出身という中里芳子女将が、みごとな包丁裁きで、鱈を頭を半分、四分と細かく割り、身とアラをきれいに取り分け、丁寧に水で洗い、皮のぬめりを取っていきます。「身は昆布に巻いて冷蔵庫において、刺し身で食べたり、味噌に少し酒を入れ味噌漬けにして食べたらうまいべ」。

朝早くから営業している市場前食堂の埼玉屋食堂。客は圧倒的に市場関係者が多い。 |
中里女将が手を休めることなく、話を続けます。「じゃっぱ汁の作り方? 大ざっぱでいいんだ。出汁に昆布を入れるところもあるけど、うちじゃアラだけ。これでじつにいい出汁が出る。野菜も大根や白菜、ねぎ、人参など旬の安いものでいい。うちではこれに凍み豆腐(高野豆腐)も使う。仕上げは味噌と酒粕。だども、絶対に欠かせねえのがアブラ、肝だ。これはアンコウの肝よりもうめえ。さらに白子があれば、ご飯が何杯もすすむべ」
できたてを、ふうふう言いながら頭から食すと、生臭さなどはどこにも感じられません。想像以上のうまさ、なめらかさです。肝と味噌、酒粕が絶妙のハーモニーを口の中で奏でています。エラはこりこり。目玉と皮はつるつる。アラと身を口の中で仕分ける喜びといったら…。
それはそれは、津軽の初冬の醍醐味を満喫したひとときでありました。
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